第1章 出逢い
お父さんに再婚するという話を聞かされて1ヶ月。
私は今、危機的状況に遭遇していた。
「彩未ー、準備はできてるのか?もうそろそろ日和達が来るぞ」
「分かってるってば!お父さんは黙ってて!あああもう、寝癖が直らないっ!」
今日は日和さん一家がうちにやってくる日。
でも日和さん達が来ると知らされたのは昨日の昼間で、個人的な準備を間に合わせるのが大変だった。
その上今日の朝は寝坊した。
しかも寝癖は直らないし、
お父さんは目玉焼き焦がすしで、
朝から大騒ぎだった。
私は、アイロンの熱を最大温度に上げ、
急いで寝癖を直した。
「よしっ、準備かんりょーっ!」
ピンポーン♪
やっと寝癖が直ったと思ったら、チャイムの音が鳴った。
「あっ、来たぞ!彩未、準備が間に合って良かったな」
と、笑いながらお父さんが言った。
「はいはい、寝坊してスミマセンでした!もー、私のことはいいから早く出れば?」
明らかに自分が悪いのに、私は面倒くさそうな顔をして心がこもってない謝罪の言葉を落とす。
「おはよう〜!」
と、日和さんのよく通る声が玄関に響く。
「おう、おはよう日和!涼くんと春馬くんも。ささ、上がって!」
涼君と春馬君は、お父さんから聞いた話によると日和さんの息子らしい。
「「お邪魔します」」
ピッタリ揃って2人の声も玄関に響く。
そして、お父さんと日和さんがリビングに入ってきた。
「彩未ちゃん、おはよう!」
と、日和さんが私に挨拶をしてくれる。
「おはようございます!」
私は精一杯の明るいトーンで、本物のように見える貼り付けた笑顔で挨拶を返した。
乃亜によると、これは私が知らない人と会った時にやってしまう癖らしい。
続いて涼と春馬が入ってくる。
「ほら、涼、春馬挨拶しなさい!この前話した彩未ちゃんよ!」
日和さんが2人に向かって叱咤する。
「「おはようございます…」」
2人は、いかにも緊張しているといったトーンで挨拶をした。
「あ、おはようございます」
だから、緊張させないように私は、普段通りのトーンで挨拶を返した。