第17章 相棒――迅悠一(中)
「……………迷惑じゃないから…………もう少しだけ………ここにいて………」
その声はあまりにも弱々しかった
『大丈夫………ここにいるから』
夏海はそっと自分を抱き締めている迅の腕に手を当てた
しばらくその状態でいると右肩が暖かくなってきた
理由は迅の涙で濡れてきているから
『…………悠一』
「…………な……に………?」
必死に声を押し殺して泣いている迅の腕を解いてベットに座ると夏海は正面から迅を抱き締めた
「………夏海……………?」
『悠一……………声我慢しなくていいから。全部、今まで泣けなかった分まで泣いていいよ』
「…………それ………は………」
夏海は離れようとする迅の頭を肩に押し付けて、優しく迅の体を抱き寄せた
そして、ゆっくりと背中を擦る
次第に迅は抵抗をやめ、だんだん嗚咽が漏れてきた
「……うっ………………うわああぁぁぁっ………」
迅は強く夏海の服を握った
「……うっ…………夏海っ…………」
『………ん?』
「………いなく………ならないで………!
俺を………一人に……」
迅は苦しいくらい夏海を抱き締めた
『………悠一?私はいなくならないし、悠一より長生きしてみせるよ』
「………でもっ……!…………うぅっ………最上さんも………かあ………さんもっ………」
『でも私はいなくならない』
「………!」
『絶対に悠一のそばにいるから』
夏海は安心させるように優しい声音で、でもしっかりと言い切った
「………くっ…………うぅ………」
迅はまた泣き出した
夏海はそんな迅をずっと抱き締めていた
しばらくすると迅からは嗚咽が聞こえなくなり、代わりに規則正しい息遣いが聞こえてきた
『…………寝たか』
夏海は迅を布団に寝かせて離れようとした
だが、迅はそれがわかったのか腕に力をいれて離そうとせず、夏海は仕方なく布団に横になった
すやすやと眠る姿は19歳という年よりも幾分幼く見える
夏海は迅を胸に抱いて目を閉じた