第17章 相棒――迅悠一(中)
夏海は小さくため息をついた
迅の手からぼんち揚の袋を取り上げて袋の中に手を突っ込み、口の中にぼんち揚を放り込んだ
「…………A級上位の俺たちを派手に蹴散らすことで「風刃」の価値を引き上げたということか?」
「ご名答。それが「プランB」」
迅はヘラリと笑い顔の横に星を出した
「そうやって風刃を売ってまでネイバーをボーダーに入れる目的はなんだ?何を企んでる?」
「……………城戸さんにもそれ訊かれたなー………」
迅は会議室での取引のことを簡単に説明した
迅は夏海の持っている袋の中に手をいれてぼんち揚を一枚つかむと口に放り込む
「そのうちに新しく入った遊真ってのが結構ハードな人生送っててさ。俺はあいつに「楽しい時間」を作ってやりたいんだ」
「「楽しい時間」…………?
それとボーダー入隊とどう繋がる?何か関係あるのか?」
「もちろんあるさ。
俺は太刀川さんたちとバチバチやりあってた頃が最高に楽しかった」
「…………!」
『…………』
「ボーダーにはいくらでも遊び相手がいる。きっとあいつも毎日が楽しくなる。あいつは昔の俺に似てるからな。
そのうち上に上がってくると思うからそん時はよろしく」
「へぇ…………。そんなにできる奴なのか。ちょっと楽しみだな」
「…………いまいち理解できないな。そんな理由で、争奪戦であれだけ執着した黒トリガーを………。
あれはお前の師匠の形見だろう?」
「形見を手放したぐらいで最上さんは怒んないよ。むしろボーダー同士の喧嘩が収まって喜んでるだろ」
『!………………』
夏海は手をヒラヒラと振りながら言う迅を睨んだ
声が無理に取り繕っている感じの声だったからだ
迅はそんな視線から逃れるように人差し指を立てて言った
「…………あ、そうそうもうひとつ。俺黒トリガーじゃなくなったからランク戦復帰するよ。とりあえず個人でアタッカー1位目指すからよろしく」
「…………!?」
「……………そうか!もうS級じゃないのか!そういやそうだ!お前それ早く言えよ!何年ぶりだ!?3年ちょっとか!?」
太刀川はさっきまで文句をいっていたとは思えないぐらい喜んで迅の肩をバンバンと叩いていた
「夏海は?ランク戦出ないのか!?迅も出ることだし出ろ!」