第10章 お泊まり――米屋陽介
気持ち良さそうに目を細める夏海は寝そうな勢いだった
「おい、夏海。ここで寝るなよ」
『ダメ…………………もう限界………』
「おいおい………」
俺は撫でている手を止め、夏海の身体を起こした
すると、本当に眠たいのか全く力が入っておらず、そのまま俺にもたれ掛かってきた
『………………ぅん…………』
「……………夏海………ほら、立てるか?」
ふるふると弱々しく頭を横に振る夏海の目は半分以上閉じていた
「…………仕方ねぇな………」
俺はベットに夏海を横たわらせ上から布団を被せた
さすがに同じ部屋で寝るのはまずいと思った俺は部屋から出ようと、ベットから離れた
が、夏海の手が俺の腕を掴んでいた
『…………ここで寝て?』
「………はぁ!?何言ってんだよ!」
『………お願い』
さっきまで閉じかけていた目がしっかりと俺を見据えていて、断ることが出来なかった
「…………わかったよ……」
俺は布団をベットから少し離れた場所に敷き、電気を消した
月の明かりが意外と明るくて、夏海の顔が見える
『………ふふっ………久しぶりだね。こうやって二人で寝るの』
「さっさと寝ろ…………。さっきまで眠たそうにしてたのは何だったんだよ」
『…………ねぇ、陽介?』
俺は寝たフリをすることにした
返事をするときっと暫く話が続くだろう
だが、俺の布団のなかに何かが入ってきて、後ろから抱き締められた
「…………ちょっ、お前、何やってんだよ」
『………抱き締めてる……』
「いや、そういうことじゃねーよ」
『………陽介はやっぱり私が嫌い?』
「……何言ってんだよ」
『嫌い?』
後ろを振り向くといつもよりも真剣な表情をした夏海が俺を見ていた
「………別に……嫌いじゃねー……」
『………私ね…………陽介が好き。
……………幼馴染みとしてじゃなくて一人の男として………陽介が好きです』
「…………は?」
恥ずかしそうに笑って言う夏海の顔はほんのり赤くなっていた