第10章 お泊まり――米屋陽介
夏海side
今日は降らないといっていたのに本部からの帰り大雨が降りだした
止む気配がなく、陽介の家に泊めてもらうことになった
私の家族は大規模侵攻で亡くなったので、陽介の家族が私の家族同然だった
だが、私も陽介も年頃だ
二人きりということに意識をしないわけがない
それに、私は密かに陽介に思いを寄せていた
それは、叶うことはないと思うが…………
そんなことを考えながら、雨を吸って重くなった制服を脱いでいると、風呂に入ろうとしたとき、脱衣所の扉が開いた
『……………え……………?』
そこには、目を見開いた陽介がいた
私の今の姿は、下着さえも身に付けていない
陽介は目を逸らすことなく見てきた
私は顔が熱くなるのを感じて叫んでいた
陽介は私の叫び声を聞いて慌てて手に持っていたスウェットを入り口に置き、私を見ないように扉を閉めた
私はしばらく固まって動けないでいたが、入り口に置かれたスウェットを見て、陽介の名前を呼んだ
『……よ、陽………介………?』
自分の声が震えていることに気づいたが今はそんなことを気にしている場合ではなかった
「……ん?」
陽介の優しい声が聞こえて私はお礼を言った
『………その………着替え………ありがと………』
「………あ、ああ……」
さっきのことを悪いと思っているのか、躊躇いがちに返事をした陽介に心のなかで謝ってお風呂に入った
シャワーを浴びて、充分に温まった私は陽介のスウェットとドライヤーを借りて、髪を乾かした
少し大きめのスウェットは着ぐるみを着ているような状態に近くておかしかった
リビングに出ると、ソファで寝ている陽介がいた
着替えてはいるが、雨に濡れたせいで髪は少し湿っている
風呂に入らなければ風邪を引くかもしれない
私は気持ち良さそうに眠っている陽介の肩を揺すった
『……………陽介』
しかし、起きる気配がない
『……………陽介、起きて。風呂に入らないと風邪引いちゃうよ』
さっきより少し力を入れて揺すってみると、やっと目を開けた