第68章 俺様―――出水公平
「いずみんはこのあと暇?」
訓練が終わり夏海さんたちとお菓子を食べていると不意に五十嵐さんがそう聞いてきた
「特に予定はないです。それがどうかしましたか?」
「さっき餅川から連絡来てな~。ウチんとこと餅川んとこで飯行こかってなってん」
『あー、今日話してたやつね。この前レポート手伝ってやったお礼でしょ』
「らしいな~。いずみんにも伝えてくれって餅川が」
「俺は行けます」
「何だよいずみん!来るのか?」
そう言った津久田先輩の頭を棚木先輩が容赦なく叩く
「尚吾!そんなに邪険にしたらいずみんが可哀想でしょ!」
「いや、気にしてないんで……。そろそろ……」
未だにバシバシと叩いている棚木先輩にそう言うとにっこりと笑い
「そう?いずみんがそう言うなら……」
と、叩くのをやめた
(女って………恐ぇな……)
チラリと夏海さんを見ると首を傾げて不思議そうにこちらを見る
(夏海さんもあんなことになるのか……!?)
「……見たくねぇな……」
『何が?』
「いや、何でもないです」
「ほな決まりやな。場所は焼き肉やて」
「えー、焼き肉ですかー?」
棚木さんがそう言った
どうやら、女子にとって焼き肉はあまり嬉しくないらしい
『あやちゃん。今度二人で新しくオープンしたスイーツ店行こうか。今日は我慢できる?』
「二人でですか!?もちろんです!我慢できます!」
「やっぱりずりーぞ!お前!いずみんもあやも夏海さん独り占めしやがって!」
「まぁまぁ。ほな俺と二人きりでどっか行くか~?」
「げっ……俺そんな趣味ないっす!」
「趣味ちゃう趣味ちゃう。ただの二人きりのデートや」
「嫌だーー!」
頭を抱えて叫ぶ津久田先輩を見て朝霧隊の人達はあはは、と笑っていた
朝霧隊ではこれが日常なのかもしれないが、俺は冷や汗をかいていた
一瞬、五十嵐先輩がそっちの人なのかと思ってしまった
何せ、ここの隊の人達はキャラが濃いのだ
俺は「はは……」とひきつった笑みで笑うことしかできなかった