第68章 俺様―――出水公平
太刀川さんたちと合流して、焼肉屋に入る
唯我はいなかった
人数が7人と多いため、座敷に案内された
靴を脱いで座ろうとすると夏海さんが太刀川さんの隣に座ろうとしていた
ぐいっ
『わっ』
夏海さんの腕を引っ張って俺の隣に座らせる
「夏海さんは俺の隣」
そう言うと夏海さんは少し目を見開いてから頬を赤く染めた
少しは……意識してくれてんのか……?
ちょっとだけ嬉しく思っていると、前に座っている津久田先輩に睨まれる
その視線から逃げるようにメニューに目を通した
席順は
太刀川 国近 出水 朝霧
五十嵐 棚木 津久田
だ
酒を飲む成人同士で固まった方がよかったのだろうが、そんなことは知らない
適当に肉や野菜を頼み、焼いていった
『はい、公平』
「あ、ありがとうございます」
ん、と肉や野菜が乗った皿を差し出され受けとる
その時、二人の指が触れた
『………っ』
夏海さんはまるでウブな女子のような反応をする
それを見て少しいじめたくなった
「……夏海さん?顔赤いけど大丈夫すか?」
俯いている夏海さんの顔を覗き込んでみると、目を見開いて固まってしまった
チラリと津久田先輩たちを見ると五十嵐さんが話していてそちらに耳を傾けていた
そのため、こっちのことは誰も見ていない
「可愛いすね、夏海さん」
『………っ!?』
唇が触れるか触れないかの距離まで近づいてそう呟く
夏海さんの耳まで真っ赤になるのを確認して、何もなかったかのように離れて五十嵐さんの会話に耳を傾けた
そして、夏海さんの手を離さないように、周りにバレないように優しく握った