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ワールドトリガー【中・短編集】

第65章  貴女のために―――迅悠一




『………』


ここは……

私は死んじゃったのかな……


辺りはオレンジのような黄色のような空間

そこに私は一人ポツンと立っていた



「夏海」

その声に振り向くとお父さんとお母さんが立っていた

『お父さん!お母さん!』

「大きくなったわね……夏海」

優しく包み込んでくれるお母さんにぎゅっと抱きつく

大規模侵攻で死んでしまった両親にまた会えるとは思っていなかった


でも、二人に会えたということは……

私は…


「夏海はまだ死んでいないよ」

『え?でも……』

「私たちは最後に夏海に会いに来たの」

『さい……ご……?』

「私たちはもう行かなきゃならないから。
最後に大きくなった夏海に会えて嬉しいわ」

『お母さん……』

私の存在を確かめるように私の頬を撫でる手を上から握る


「それに、夏海はそろそろ目を覚まさなきゃな。
大事な人が待ってる」

お父さんのその言葉に顔が赤くなってしまった


大事な人……迅さん……


「大好きなのね。その人のこと」

「夏海の好きな……人か……」

にこやかに微笑むお母さんとは違い、お父さんはがっくりと肩を落とした

「あなた……落ち込まないで」

『迅さんは……私のこと待ってくれてる?』

「ええ。だから、早く目を覚ましなさい」

『でも、目を覚ましたら……』

「大丈夫。俺たちはずっと夏海の心のなかにいる」

ぽんと大きな手で頭を撫でられる
そして、私を反転させ、背中を押した

『……!』

反射的に一歩を踏み出したが、振り向く


「ほら、行ってこい」

「行ってらっしゃい、夏海」

二人の暖かい笑顔に見送られて私は二人に背を向けた


『行ってきます!』


そして、振り返って精一杯笑顔でそう言った


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