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ワールドトリガー【中・短編集】

第65章  貴女のために―――迅悠一


城戸さんに本部に呼ばれて会議室に向かっていると、太刀川さんとばったり会った

「迅」

「……太刀川さん」

「どうしたんだ?珍しいな。お前が本部にいるなんて」

「ちょっと城戸さんに呼ばれててね……。
きっと夏海のことだと思うよ」

「朝霧の調子はどうだ?」

その言葉を聞いてぴくりと肩が震えるのが自分でもわかった
でも、それを隠すように笑って言った

「まだ、目は覚まさないよ」

でも、言っているうちにどんどん不安になっていく

「……もう、夏海が目を覚まさなかったら……俺は……。

俺が……死んでたら……」


ドカッ


右頬に鈍痛が走ったと思ったら俺の体は少し離れたところまで吹き飛ばされていた

「お前があいつを信じてやらなくてどうすんだ!

それに朝霧が体を張ってお前を守ったんだ!!

自分が死んでたらなんて考えるんじゃねぇ!!」

「……!」

痛む右頬を押さえ太刀川さんを見上げると今までにないほど険しい顔をして肩を震わせ怒っていた

俺を殴った手は骨が白く浮かび上がるほど強く握りしめられていた

「あいつがお前をどんな思いで守ったかよく考えろ!」

太刀川さんはそう言うと俺の横を通りすぎて行った


夏海がどんな思いで……




『………大好き……です……』



「……!」


そうだ

夏海は俺のことを好きって言ってくれたんだ

言い逃げなんてさせない

俺だって気持ちを伝えるんだ……!




俺は立ち上がって城戸さんのもとに向かった


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