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ワールドトリガー【中・短編集】

第65章  貴女のために―――迅悠一


あの後、夏海は本部の医務室に運び込まれて治療が始まった

夏海は俺を庇って傷を負った

トリオン体なら傷を負うことはない

だけど夏海は傷を負った


俺は返ってきた風刃を強く握った


――――――




「こっちは終わった。そっちはどうだ?夏海」

『こっちも終わりました。そちらに合流します』

「わかった」

トリオン兵を片付けた俺たちは合流し、屋根の上に座っていた

「強くなったな」

『迅さんのおかげです』


そう笑う夏海の頭を撫でたとき、通信が入った

すぐ近くにゲートが現れた

それは俺たちにも見えたため、夏海と目を合わせてそちらに向かった


トリオン兵がこちらに向かってきた
数はさっきの二倍ほどだ
余裕で勝てる



――――はずだったんだ






風刃は今日は持ってきていなかった
鬼怒田さんに貸してほしいと頼まれ、一週間貸し出していた

そして、今日このあと返してもらえる

だから、この任務までは通常トリガーを使っていた


俺はスコーピオンを構えた



だが、


パキンッ



「!?」

『迅さんっ!?』

夏海が俺の異変に気づく
と同時に換装が解けた

「ぐっ!」

モールモッドの刃を間一髪で避けたとき、俺の前に夏海が立ちはだかった

『本部!!こちら朝霧!迅隊員のトリガーに不具合が発生しました!至急応援を!!』

「今太刀川隊を向かわせている!何とか耐えてくれ!」

太刀川隊が来るなら心配はない

だが、それは来てからの話だ

いくら、実力をあげてきた夏海でさえ、生身の迅を守りながら戦うのはキツかった


夏海の身体にどんどん傷が増えていく
夏海がどっと膝をついたと同時に標的が俺に移った

その時、無機質な音が響いた

《トリオン漏出過多、ベイル――『トリガーオフ!!』

「来るな夏海!」

未来が視えた俺は叫んだ

だが、遅かった



ドスッ


俺に背中を向けた夏海の腹をモールモッドの刃が貫いていた


「夏海っ!!」
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