第65章 貴女のために―――迅悠一
「………夏海……なんで………」
『迅……さん……。
……よかっ……た……無事……で………』
俺の腕の中にいる夏海は弱々しくふにゃりと笑った
その夏海の腹部からは鮮血がどくどくと流れ出ている
夏海を抱き締める俺の腕にも夏海血がついていた
「おいっ……夏海っ。……夏海!!」
目を閉じてしまった夏海に強く呼び掛けると夏海はうっすらと目を開いた
『……聞こえ……て…ます…よ………。
……はぁ……はぁっ………。
迅……さん……。
………っ!!』
夏海は腹部の痛みに顔をしかめた
「夏海!もう喋るな!」
『………大好き……です……』
「……え?」
夏海を見ると、弱々しくも綺麗な笑顔で夏海は笑い―――――
――――そのまま眠るように目を閉じた
「夏海ーーーーっ!!!!!」
警戒区域に俺の悲痛な叫び声が響いた