• テキストサイズ

ワールドトリガー【中・短編集】

第49章 ちょっと休憩6


夏海が震える手でドアをノックすると、聞こえた声は間違いなく風間さんの声だった

俺は太刀川さんの目が覚めてないんじゃないかと不安になったが、太刀川さんは上半身を起こして俺たちを見た

太刀川さんは夏海の名前を呼び、手招きする
夏海はそれに引き付けられるようにゆっくりと病室へと足を踏み入れた

太刀川さんに抱きついた夏海は子供のように泣き出した

俺も心底安心した

夏海はそのまま寝てしまったが、太刀川さんの存在を確かめるかのように服をぎゅっと握っていた





「太刀川、俺たちはそろそろ帰る」

風間さんが椅子から立った
それに合わせるように出水たちも腰をあげる

「じゃ、俺たちもそろそろ行きます」

「わざわざありがとな」

「いや、無事でよかったっす」

「お大事に、太刀川さん」

「おう」

病室の扉が閉まるのを確認して、夏海の寝顔を見た

泣いたせいか少し目の周りが赤くなってしまっている
そこをそっと撫でた

「心配掛けて悪かったな……夏海」

動く左手で夏海を抱き寄せると夏海は目をうっすらと開いた

『………お兄ちゃん………泣かないで………』

「泣いてねーよ」

俺の顔に手を伸ばした夏海の手を握り返す

『泣いてないけど…………泣いてる』

「なんだそれ」

夏海はへらりと笑うと俺の右腕に触れた

『痛い………?』

「今は痛くねーよ。動きにくいけどな」

『…………』

「そんな顔するな。大丈夫だ」

辛そうに顔を歪めた夏海の頭をぐりぐりと撫で回す
だが、大人しく身を任せている夏海は俺を見るとまた泣き出しそうになった

「泣くなよ。俺は無事だ」

『…………うんっ………』

必死に涙を堪える夏海だったが、一粒溢れてしまい、夏海の涙腺が崩壊した
次から次へと溢れてくる涙を拭う夏海を抱き締める

「俺はお前一人を残して死なねーよ。お前が生きてる限り、俺はお前を見守っていく」

夏海は腕の中で何度も頷いた


/ 345ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp