第47章 幻影―――東春秋
『透、ちゃんと標的を見て。
もう少し左。そう。肩の力を抜いて……自分に自信もって。
大丈夫。透なら出来るよ』
訓練場で奈良坂の背後に立ち、そうアドバイスする夏海
奈良坂は目を閉じ、ゆっくりと深呼吸をすると引き金を引いた
ドンッ
見事その弾はボードの中心を射抜く
奈良坂はほっと息をついた
『出来るじゃん、透』
「はいっ!ありがとうございます!」
『じゃあ、私は行くから、頑張ってね』
「ありがとうございました!」
大きく頭を下げる奈良坂に微笑んで頭を撫でる
『あまり頑張りすぎないようにね』
奈良坂に手を振りながら俺の方に向かってくる夏海は嬉しそうに笑った
『春秋、来てたなら声掛けてくれればよかったのに』
「指導の邪魔はしたくないからな」
『ありがとう』
「随分奈良坂を気に入ってるな」
『あの子は伸びるよ。今すぐにじゃないけど何年か後にはスナイパーを引っ張っていける存在にナルトなると思う』
「そうか。それは楽しみだ」
『透が強くなったところ見てみたいよね。後輩に指導してるところとか。透ならすごく分かりやすく教えてくれそう』
「夏海だって充分分かりやすいよ」
『そう?それなら嬉しいな』
夏海は面倒見もよく、俺と同じ時期にスナイパーになった
今では俺が最初のスナイパーと言われているが、最初になると決めたのは夏海で俺は誘われてなった
夏海の腕は当時の俺より優れていた
自身の訓練ももちろんしていたが、後輩の指導に力を入れていた
『私は今より未来に貢献できたらそれが一番いいと思ってるよ』
夏海の口癖はこれだった
自分が戦えなくなっても自分が育てた後輩が戦ってるのを見れたら誇らしい、と
――――しかし、夏海が後輩の成長した姿を見ることはなかった―――――
その数週間後、夏海は小さな子供を庇って車に跳ねられた
子供は奇跡的に無傷だったが、夏海は即死だった