第47章 幻影―――東春秋
「……夏海……遅くなって悪いな………」
夏海の墓の前に座る
すでに誰か来たのか、花が飾られている
俺は目を閉じ墓に手をあてた
『――――――春秋』
そう、俺を呼ぶ声が聞こえて目を開けた
「夏海――――」
そこには2年前と変わらない姿で立っている夏海
『春秋、彼女は出来た?』
「出来てないよ。どうやら、まだお前のことが忘れられないらしい」
『………そっか……ごめんね春秋……。
……あなたを縛り付けてしまって………』
「そんなことないよ。俺が夏海のことを忘れたくないんだ」
そう言うと、夏海は困ったような、でも、少し嬉しそうに微笑んだ
「それより、夏海の言った通り、奈良坂は立派になったよ」
『うん。さっき来てくれた。泣かせちゃったみたいだけど………』
「……そうか……」
『春秋』
「ん?」
『まだ、春秋が私のことを忘れてないことはとても嬉しかった。でもね――――』
――――――それ以上に、私はあなたに幸せになってほしい―――――――
そう言った夏海はすぅ、と消えていった
「…………夏海…………」
―――――俺は………………本当にお前のことを愛していたよ――――
『…………ありがとう………春秋………』