第43章 ちょっと休憩5
「夏海!」
『宏樹くん!ごめんね。防衛任務入ってて』
「全然いいよ。俺たちを守ってくれてるんだから」
『ありがとう』
自然な流れで手を取られて宏樹くんが歩き出す
『どこに行くの?』
「もう少ししたらわかるよ」
少し、ほんの少しだが胸騒ぎがした
だが、気のせいと自分に言い聞かせてついていく
「俺さ、ずっと夏海のこと好きだったんだよね」
『そうなの?』
「うん。だからさ、ちょっとでも振り向いてもらおうと思って何人かの子と付き合ったんだけど、全然見てくれないから……告白したんだ」
『…………そ、そうだったんだ。ごめん。私………そういうの疎いから……』
「いいよ。謝らなくて。………さ、着いたよ」
足を止めた宏樹くんの前にはマンションがある
「さ、入って」
エントランスの扉を開けた宏樹くんの目は笑っていなかった
怖くなってゆっくりと後ずさりする
『ごめん、やっぱり今日は……』
「………は?ここまできてそれかよ」
『……っ!?』
「さっさと来いよ!」
手首を強く捕まれて引っ張られる
(………嫌だ……!
……お兄ちゃん………!!)
「その汚ねェ手を離せ」
『「!?」』
私の頭上から求めていた声が聞こえたかと思ったら体を抱き寄せられて、宏樹くんの手がギリギリと掴まれた
「……だ、誰だよお前!!」
あまりの痛さに宏樹くんは私の手首を掴んでいた手を離した
私は安心して涙が溢れた
お兄ちゃんは私を反転させて片腕で抱き締めた
『………おにい……ちゃんっ………!』
「もう大丈夫だ。夏海。
―――――――おい、お前」
お兄ちゃんの声が恐ろしいくらいに低くなった
私は肩を震わせてしがみついた
「二度と夏海に近づくな。次何かしたら……殺す」
「………っ。………わかったよ!」
宏樹くんはマンションのなかに逃げるように入っていった