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ワールドトリガー【中・短編集】

第40章 障害―――出水公平(番外編)


受付で金を払って中にはいる

全額払いたかったけど、夏海はそれを許さず、頑なに自分の分を払うと言った
あまりにも必死なため俺の方が折れてしまった

「こういうのは男に払わせれば良いのに」

『ダメ!』

ムッ、として、頬を膨らませている
その頬をつつくと、夏海の口から空気が漏れた

「ぷっ」

『笑わないで!』

夏海は耳が聞こえない分、表情が豊かだ

愛想笑いばかりして近づいてくる女どもに比べたら夏海の方が可愛いし、ずっと一緒にいたいと思う

「夏海。行こっか」

『………!』

まだ少し機嫌を損ねている夏海の手を軽く引くと、大きく頷いて腕にすり寄ってきた



『………!』

私と出水くんの前には大きな水槽
その中にはジンベイザメもゆったりと泳いでいる

(すごい………綺麗……)

『すごいね!魚がいっぱい!』

「ああ、そうだな」

優しく微笑まれて思わずどきりとしてしまう
それを隠すように水槽に目を向けた

(………本当に綺麗………)

水族館に来るのは今日がはじめてだ
まるで自分が海のなかにいるように錯覚してしまう
出水くんが連れてきてくれなかったら、この綺麗な魚たちのことを知らないままでいたのだろう

『出水くん。今日ここに連れてきてくれてありがとう』

「どういたしまして」

『……出水くんは楽しい?』

「?楽しいけど」

『でも、あまり水槽見てないから』

「俺は夏海が楽しんでるのをみたら楽しいから」

『………///』

恥ずかしくて俯くと、頬に手を添えられて上を向かされた

「夏海………好きだよ」

出水くんの顔がゆっくりと近づいてきて、私も目を閉じる
唇に出水くんの唇が触れる
それは触れるだけのキスだったが、出水くんの気持ちが伝わってくるようだ

『………///』

「………さ、行こうか」

照れ隠しか私の手を引っ張っていこうとする出水くんを逆に私が少し引っ張った

ちゅっ

私の気持ちも伝わるようにと頬にキスをする

「………///!?」

でも、やっぱり恥ずかしくて出水くんの顔が見られないでいると、優しく頭を撫でられた

顔をあげると少し顔が赤い出水くんが微笑んで私の手を引いていく
私も慌てて出水くんの隣に並んだ


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