第35章 障害――――出水公平(中)
太刀川さんに呼び出された
夏海のことで話があると言う
夏海の名前を聞いて躊躇わず、行くと返事をした
急いで準備して作戦室へと向かう
しかし、作戦室にいたのは夏海一人だけ
それに、こちらを向いた夏海は少し顔が赤い
「え!?何で夏海がここに?太刀川さんは!?」
部屋を出ていこうとすると夏海がちょん、と服の一部を掴んできた
(……まて……今この状況でこれは……ヤバイ………)
「………夏海?」
速くなる鼓動を抑えるように、静かに深呼吸して、ゆっくりと振り返り夏海を見ると夏海は俯いていたが、耳まで真っ赤だった
『…………』
「………どうした?」
少し屈んで目線を合わせると夏海が抱きついてきた
「えっ!?」
突然のことで体が強張る
しかし、それを感じたのか夏海は逃がすまいとぎゅうっ、と更に腕に力を入れた
少し力が緩んだ夏海の体を自分から離す
「……俺……バカだからさ……こんなことされたら……期待しちゃうんだけど……」
すると、夏海の口が動いた
「………?」
出水くんが…………すき
確かにそう動いた
「…………!」
顔がにやけるのを見られたくなくて、夏海を強く抱き締める
夏海の腕が背中に回されたことに気づいて更に顔がにやける
「あっ、忘れてた」
自分の気持ちをちゃんと伝えてないことを思い出して、夏海の目を見る
「俺も……夏海が好きだ。俺と付き合ってくれ」
夏海はポロポロと涙を溢して何度も頷いた
夏海を包み込むように抱き締めて、涙を掬うと、夏海はヘラりと笑った
『初めて、声が聞こえないのが嫌だと思った』
「どうして?」
俺たちは手を繋いで、ソファに座っていた
『だって、出水くんの声が聞こえないから』
「俺も……1つだけ我が儘言って良いなら夏海の声が聞きたい」
夏海の唇を親指でそっと撫でるとビクッ、と肩を揺らして真っ赤になる夏海を見て笑う