第35章 障害――――出水公平(中)
「でも、別に夏海の耳が聞こえなくても、声が出なくても俺は気にしない。
その代わり―――――」
夏海と向かい合うように座り直す
「――――俺のとなりに居て」
頬を撫でてそう言うと、夏海は赤い顔のまま頷いた
「…………さて、と……」
出水くんは急に立ち上がると扉の方に歩いていった
そして、扉を開ける
すると、太刀川さん、加古さん、諏訪さん、冬島さんが雪崩れ込んできた
後ろにはため息をつく風間さんと東さん、二宮さん
堤さんが苦笑していた
「………やっぱり。太刀川さんなら盗み聞きしてると思ってましたよ。まさか、皆さんいるとは思いませんでしたけど……」
『………!』
今までのことが全て聞かれていたのかと思うと恥ずかしくて逃げたくなった
しかし、その前に加古さんに抱き締められる
「夏海!よかったわね!けど、出水くんに泣かされたらいつでも言ってね?蜂の巣にするから」
「ちょっ、加古さん!夏海に変なこと吹き込まないでください!」
「あと、夏海とは高校卒業するまで………わかってるよな?」
東さんが出水くんに釘を指す
笑ってるけど、目が笑ってない
「………わ、わかってますよ!」
「出水~。夏海に変なことするなよ?」
「だから!わかってますってば!」
先輩たちの牽制に痺れを切らした出水くんは私の肩を抱いた
『………!』
「俺は!夏海のことこれ以上ないくらい大切にするし!結婚したいとも思ってますから!」
何か言ってるのはわかったが、出水くんの口元が見えないため何を言ったのかはわからない
しかし、太刀川さんたちを見ると口をあんぐりと開けていた
「マジかよー!出水ー!」
「出水面白いな!」
『??』
「夏海」
頭に重さを感じて上を向くと二宮さんが薄く笑っていた
「出水は良いやつだし、頼りになる。いっぱい可愛がってもらえ」
こんなこと言うのは珍しいと思ったが、大きく頷いた
太刀川さんたちにからかわれている出水くんの方をチラ、と見ると視線に気づいたのか出水くんがこちらを見た
にっ、と大好きな笑顔で笑ってくれて私も微笑む
「おーおー、ラブラブじゃねーの」
それを見ていた諏訪さんが冷やかしてくる