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ワールドトリガー【中・短編集】

第35章 障害――――出水公平(中)


俺は今日、太刀川さんに作戦室に呼ばれた
嫌な予感がしていたが、行かないとあの人はうるさい、ということは経験上わかったことだ

仕方なく行くと、案の定、課題の山に埋もれただらしない隊長の姿があった

レポートを押し付けられて、ため息をつく

コンコンコン

しばらくして、ノックする音が聞こえ太刀川さんが扉へと歩いていった

「夏海ー!」

太刀川さんは聞き覚えのない名前を口にして誰かに抱きついた
しかし引き剥がされて、夏海と呼ばれた人物ははいってくる
その顔を見て俺は目を見開いた
夏海と呼ばれた人物は昨日廊下でぶつかった女だった

「……あ………昨日の………」

そして、そいつは太刀川さんの後ろに隠れた

「……何?お前ら知り合い……?」

太刀川さんのその言葉に返事はなく、ノートが太刀川さんの前に掲げられた

『昨日、廊下でぶつかったんです』

太刀川さんは馴れているのか驚くことなく、相手をしている

「……へぇ……」

『どうして、他の人がいることを教えてくれなかったんですか!?』

「いやぁ、すっかり忘れてた」

なはははは、と笑う太刀川さんの後ろからそいつを見た
しかし、夏海はぎょっ、として後ろに飛び退く

(……うわ………ちょっと傷ついたぞ、今の………)

「この子、話せないんすか?」

「耳が聞こえないんだよ。あ、でも、口の動き見て会話は理解できる」

「なるほど」

ノートを使う理由を理解できて夏海の元へと歩いていった

「俺、出水公平。よろしくな」

手をさしのべて言うと夏海は俺の手を見て戸惑っていた
俺は無理矢理握手をした


夏海はソファに戻った俺の手にあるレポートをみてとった

『ダメです。太刀川さん。忍田さんに自分の力でやらせるように言われてますから』

ノートにそう書いてレポートを太刀川さんの前にドンッ、と置く

「夏海、鬼だ……」

ふんっ、とそっぽを向いた夏海と目があった
だが夏海は、慌てて目を逸らす
夏海はかなりの人見知りらしい
俺の回りにはあまりいなかったタイプのため新鮮で思わず笑みが溢れる

「夏海ー。俺もう無理ー」

そんな俺の思考をだらしない太刀川さんの声が現実に引き戻した

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