第35章 障害――――出水公平(中)
私は書店で買った参考書と、問題集を開いた
レイジさんの説明を聞きながら、問題を解いていく
分からないところを時折、質問しながらやっていくと、あっという間に時間は過ぎ、桐絵ちゃんたちがやって来た
「夏海!」
桐絵ちゃんは私の顔を見るなり抱きついてきた
とりまるくんも栞ちゃんも来たところで勉強は休憩して、パウンドケーキを食べることになった
迅さんはあとで食べてもらおう
桐絵ちゃんたちの学校の話が始まって、いつのまにかボーダーの話へと変わる
食べて、笑いながら話を聞いていると不意にとりまるくんが私に聞いてきた
「夏海先輩はやっぱりランク戦しないんすか?」
『太刀川さんたちとはやってるけど、他の人とはやってないんだ。やった方がいいかな?』
「やらなくてもいいでしょ。私たちだって参加してないし」
桐絵ちゃんはひらひらと手をふっていった
「でも、いつかは夏海先輩のこと他の人に知られるんじゃないすか?夏海先輩強いし」
「まぁ、ゆっくり慣れていったらいいだろう」
「夏海は人見知りがなかったらきっと回りに人がいっぱい集まるのにね~」
『そんなことないよ』
何故かどや顔でいった栞ちゃんに思わず笑いが込み上げてくる
「でも、私たちの年で夏海のお菓子食べれてるのって私たちだけよね?」
私はこくん、と頷くと桐絵ちゃんは満面の笑みを浮かべた
「なら、私たちって夏海にとって、特別になれてるってこと?」
私も笑って大きく頷くとその場の皆が優しく笑った
『今日はありがとうございました』
少し薄暗くなった頃レイジさんの運転する車で本部まで送ってもらった私はレイジさんに礼をいった
「また、遊びにこいよ」
レイジさんはその大きな手で私の頭を撫でると車に乗り込んで支部へと戻っていった
本部に作られた自分の部屋に戻ると忍田さんが部屋のなかにいた
ドアの開く音で気づいたのか私の方を見る
「勝手に入ってしまってすまないな」
私は慌てて首を横にふる
部屋には見られて困るものなど置いていない
『どうなされたんですか?』
「慶が課題をやっていなくてな。俺が監視しておきたいんだが、明日も会議が入っている。夏海に頼みたいんだが……」
『大丈夫です。任せてください』