第35章 障害――――出水公平(中)
コンコンコン
ガチャ
私は軽くノックをしてから会議室へと足を踏み入れた
「ご苦労」
奥に座っている城戸指令はそう言った
言った、といっても、私には声が聞こえない
生まれつきで、ボーダーに入るまでは手話で会話していたが、ボーダーに入ってからは読話、簡単に言うと唇や舌の動き、顔の表情から話の内容を読み取って、生活していた
私は頷くと忍田さんの元に歩いていった
持っていた書類を渡して隣に座る
先程廊下で男の子とぶつかってしまったが、落とした書類は会議室の前で整理した
私のちょうど向かいに座っている唐沢さんと目があって唐沢さんがにこっ、と笑いかけてきた
私もそれに応えて微笑む
私は極度の人見知りだが、すっかり上層部の人たちとは仲良くなったため、こんなこともするようになった
他には東さん、冬島さんをはじめとする成人隊員
東さん、太刀川さんは私の師匠で、他の方には高校に行っていない私は勉強を教わっている
そんなことを考えているうちに、会議は終わった
このあとは、玉狛支部に行って、レイジさんに勉強を教えてもらう予定だ
玉狛のメンバーは人見知りの私だが、全員と仲がいい
今日作ったパウンドケーキをもって、玉狛支部へと向かった
すでにレイジさんには連絡を入れている
あと、一時間ほどすると桐絵ちゃんや、栞ちゃん、とりまるくんも来るらしい
玉狛につくと、扉の前で陽太郎が雷神丸にのって迎えてくれた
「夏海!今日はなんだ?」
目をキラキラとさせる陽太郎の前に屈んでパウンドケーキを差し出すと、私の手から受け取って先にキッチンへと向かった
「レイジー!夏海が来たぞ!」
陽太郎の後に続いて、キッチンへ入ると、レイジさんがエプロンをつけて陽太郎からパウンドケーキを受け取っていた
「毎回、悪いな」
『いえ、作るのは楽しいですから』
常に持っているノートにペンでそう書いて見せると、レイジさんはフッ、と笑みを溢した
私もつられて笑う
「お菓子作りで言えば夏海の方が断然うまいからな」
『ありがとうございます』
パウンドケーキは皆が来てから食べることになり、それまでは予定通り勉強をすることになった
今日するのは数学で私が一番苦手な教科である
国語、社会は自分で勉強できるが、英語、数学、理科は今日みたいに教えてもらっている