第35章 障害――――出水公平(中)
(……あー、……槍バカどこ行った?)
ランク戦をしようということになり、本部に来ていた俺だが、トイレに行っている間に槍バカ、米屋はブースから消えていた
(……ったく、移動するなら連絡くらい入れろよ……)
イライラしながらも本部の廊下を歩いて、角を曲がったところで誰かにぶつかった
「うわっ!」
バサバサッ
ぶつかった拍子に相手が持っていた書類が床に散らばる
「悪い」
そう言って、書類を広い集めて相手へと手を差しのべる
驚いたように顔をあげた相手は女でその顔は見たことのないくらい綺麗で……
思わず見とれてしまっていた
「……悪いな。……大丈夫か……?」
俺の手に自分の手を重ねた女は書類を受けとると深く頭を下げて、俺の横を通り過ぎて走っていってしまった
「……あんなやついたか……?」
俺はランク戦をするために、他の隊員よりも本部にいることが多い
しかし、あの女は見たことがない
後ろ姿が見えなくなってもその場に立ち尽くしていた俺は槍バカの声が聞こえてやっと動き出した
「おー、弾バカ!いたいた!」
「いたいた!じゃねーよ!どっか行くなら連絡くらい入れろ!」
「わりーわりー」
まったく反省していない槍バカを軽く睨みながら、さっき見た女の顔が頭から離れなかった