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ワールドトリガー【中・短編集】

第21章 酔い潰れ――成人たち


東version

「俺が送っていくよ」

「お願いします」

「ああ」

店の前で風間たちと別れ夏海を支えながら夏海の家に向かった

『…………すみません………東さん………』

「気にするな」

『………えへへ………やっぱり東さんは………紳士ですねぇ……太刀川とかとは比べ物になんない……』

「そんなことないだろ。太刀川もああ見えて優しい」

『………それは最初だけですよぉ………あいつは猫かぶりです……』

「ははは、そうか?」

『………そうですよぉ………』

へへ、と笑う夏海はいつも以上に色気がある
目を逸らしながら話題を変えた

「それにしても今日は飲みすぎだぞ?体に悪い」

『………へーきです………私はお酒に強い方なんで……』

そういう夏海は確かにあの量を飲んでこれくらいで済んでいるのだから強いと言うのは本当なんだろう
それにしてもあれは飲みすぎだ
たしかに退院祝いとしての飲み会だが限度というものがある

そこまで考えて思考を中断した
酔っぱらいに説教しても覚えていない

『東さんて、彼女いるんですかぁ?』

「………いや、今はいないんだよなー。そろそろ結婚も考えた方がいい時期だとは思うんだが……」

『なら、私はどうです?』

グイッ、と顔を近づけてきた夏海の目は酔っているとは云え本気だった

「…………そういうのは酔いが覚めてから言え」

頭をポンポンと叩いて無理矢理離れさせると夏海は俺の手を掴んだかと思うと手の甲にキスを落とした

『………酔いが覚めたら聞いてくれるんですか?』

「………え?あー、いや、まぁ………な……」

曖昧に答えると夏海は俺の襟首を掴み強く引き寄せた

「ん!」

夏海は必死に舌を絡ませようとするが俺は夏海の肩を押し返してキスをやめさせた

「夏海、そういうのは好きな人にしろ」

『東さんが好きなんです!本気だから………!』

そう言い放ち夏海は家の方に走っていった
すぐ近くだったため夏海が家に入るのが見えて、俺は自分の家に戻った

「………はぁー……」

ソファに身を投げてコップに注いだ水を飲む
頭のなかに夏海の言葉が思い浮かんでは消えていく

『東さんが好きなんです!本気だから………!』


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