【最俺&アブ】実況に手を出したら大変パニックなことになった。
第2章 ニコニコ超会議へ出陣
「繭子、お兄ちゃんは悲しいよ」
「だからごめんってば。盛り上がっちゃったんだもん、仕方ないじゃん。」
夜10時。帰り道の途中。
自分の出番が終わったあとはずっと最俺のみんなとわっちゃわっちゃしてたわけで、
全然お兄ちゃんの解説とか聞いてなかったわけで。
拗ねられた。
「あーはいはい最俺ですねわかります」
「もう拗ねないでよ。妹に友達増えたんだってことくらい、喜んでくれたっていいじゃない?」
「いいですか、繭子は俺だけの物です。」
「私は物ではありません。」
冷ややかな目を向けてやると「どうせ最俺には勝てませんよ」とぐずりだした。
この人は昔からそう。
自分のかっこいい所、凄い所はとにかく私に見せたがる。
尊敬して慕って一番だと思われたいのだ。
「勝ち負けじゃないでしょ、最俺は最俺の魅力があって、お兄ちゃんも、お兄ちゃんにしか出せない魅力が…あるような…気が…」
「最後なんで言い切らなかったかな!?!?!?」
「ごめん!思いつかなかったかな!!!」
「泣いていいかな!?」
大の大人が腕に目を当てて泣く真似をする。
こういうみっともない姿ばかり見てるからこそ株が上がらないのだけど。
「小さい頃は繭子も『大人になったらお兄ちゃんと結婚する!』とか言ってたのになあ」
「はぁ!?言ってない!絶対言ってない!!」
「言ってたんだなこれが~!!俺未だにそれ信じてるからね?」
「言・っ・て・な・い!信じられても兄妹は結婚できません!」
あーあの頃の繭子は本当に可愛かったなー、なんて鼻の穴膨らませながら
過去の思い出に浸り出す兄。
本当に覚えてないけど、そんな事言ってたのなら恨むぞ昔の自分…!
「どっかのギャルゲーみたいにさあ、実は兄妹じゃなかった、とかなんないかなー」
ふざけた台詞だけど、彼の顔はどこか、切なげだった。
夜空の星を眺めながら、私の顔は見ない。
まるで独り言だったかのような。
「…寒くなってきたね」
どんな答えが正解か解らず、私はそんな言葉しか思いつかなかった。
「そうだね、帰ろうか」
そっと繋がれた手。
いつもなら振り払ってやるのに。
今日だけは手の力を緩めて。
その暖かさに包まれていた。