第9章 貴方は元カレの
「僕の兄は正直あまり褒められた人ではありません。
ですが、本当に一途で全力な人です」
「はぁ」
「覚えていませんか?
都心のショッピングモールでの僕を。」
彼は温和な口ぶりで、私の記憶を一つずつ紐解いていく。
「貴女は兄の彼女だ」
「え…っ、」
「語弊がありましたね…元、彼女ですか」
その口調から生み出された言葉とは思えぬほどに心に突き刺さる。
どうしてそんなことを言うの?
見ず知らずの貴方が。
「見かけたんですよ。
兄と貴女が手を繋いでデートしているの。」
なおも青年は淡々と話を続ける。
間髪を容れず一息に。
「3日で終わるなんて、予定より早く別れてくれましたね」