第9章 貴方は元カレの
吉野さんを追うように結城くんも席を立ち、ひとり忽然と残された。
とりあえずは食事をし、ラウンジでくつろごうかと考える私を、
ひとりのバーテンさんが見ているのに気づいた。
…ちょっと、怖いな。
横目で覗き見るに、全く知らない人。
それでも気になってしまうのは、その人の喉元…発せられる声が声色が
大嫌いな「あいつ」…元カレに似てるからで。
気晴らしの旅行なのに。
憂いを帯びることは無いはずだ。
だけれど私の心は、かつては大好きでたまらなかった元カレを声色から想像し、
それを横取りした元親友を連想してしまう。
「吹っ切れたはずなのに、な。」