第1章 傷心旅行
「んじゃ改めてよろしくっす夏海ちゃん」
「…よろしくです、結城くん」
「固いっすよー!新太って呼んで欲しいっす!」
風邪をひきそうな温度差を感じながら、私はさらに奥のバーに行くことにした。
出発の時間まで…あと30分。
電車の揺れよりも先にお酒に溺れてしまいたい。
ラウンジでは結城くんがブーブー言っているけど、
あんなだだっ広いラウンジにふたりっきり、なんて間違って恋にでも落ちたらどうするの…。
「…それはないか」
小さく呟く。
失恋直後の私。
いくら良い人がいても、そんな気にはならない…。
「…うぉ!」