第3章 住居人
紗織side
次の日、朝9時から管理人室のチェアに座り人が来るのを待つ。
でも暇なわけで、スマホを開きYouTubeで声優さんのイベント動画を見る。
Wi-Fiもあるし、かなり環境もいい。
もしかして本当にいい就職先見つけちゃったのかな?
「ふふ、クスクス…」
「あのー」
「はい」
声をかけられスマホを閉じて、顔を上げる。
住居人さんか……な……、え…?
「す、わべ……さん?」
固まるわたし。
まさか、は……?えっと、え、え、え……?
さっきまで画面のあっちにいた諏訪部さんが目の前に?
いや、まさか。
幻覚だよね?一度視線を落としてもスマホは消してあるし、目の前の人は実存している。
じゃあ本当に諏訪部順一さん……?
目の前で微笑んだ諏訪部順一さんとそっくりなその人は、あの低音ボイスで喋りかける。
「諏訪部順一です。俺の部屋の鍵貰えるかな?」
「は、はいっ…!って、え?」
「その反応いいね」
笑いかける声、今確かに言葉にした名前。
まさか。だよね、はは…おかしいのに笑えもしないや。
諏訪部さんが、住居人…?
初めて声優さんを生で見て、ドキドキというか鼓動が収まらない。