第2章 お店で気になるタルト
何気なく店内を見渡せば、おしゃれな女性ばかりの中で、ふと男女の二人連れが目に入った。友人同士なのか恋人なのか、ここからだと判然としない。
あの子からも、ブン太と私はあんな風に見えてたりするのだろうか。
そんなことを考えてしまった。ここのところ毎週、昼休みに差し入れを持って来る後輩の姿が思い浮かぶ。
きっと私は、あの子が座りたくて仕方ない席にいるのだろう。好きな人の前で控えめに笑んでいるその表情が、私を見る時どんな風に歪むのかを、知っている。
友達には遠慮しすぎじゃないかと言われたけど、最近ブン太に何くれとなく物をあげるのを控えるようになったのも、思えばあの後輩が理由だったはずだ。
お前の気に入りそうな味だぜ、と分けてもらったタルトは、ココア風味の生地にベリーをたくさん載せたものだった。見た目は申し分なく可愛らしい。
ブン太は甘酸っぱいと顔をほころばせていたけど、どれだけイチゴやラズベリーを噛み潰しても、ココアの苦さが消えてくれないような気がした。舌の上で、先ほどまでお皿にあった綺麗なタルトがぐちゃぐちゃになっていく。
「ここ、また来ようぜ」
『受験が落ち着いたらね』
お会計の時、楽しげに言う幼馴染に、私はお土産に買ったジンジャークッキーの包みを見ながらそう返した。
一緒に出かけるのも、しばらくは控えるべきかなーなんて考えながら。