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しょうが【立海】

第2章 お店で気になるタルト


『おいしいねコレ……!』
「やっぱ混むだけあるよなー」

 そう言ってタルトを食べるブン太の顔は幸せそうだった。周りが若い女の人ばかりで少し浮いているが、本人はそんなこと気にしてないらしい。雑誌で話題のお店と紹介されていたから何となく教えてみたが、お気に召したようだ。

 久々に丸一日空いたから、お前がいつか言ってたタルト食べに行こう、というメールが来たのは昨日のことだった。いつの話だと思いながら、休まなくていいのかと聞いたら、どうしても食べたいけど店の場所を忘れたという間抜けな返事がきたものだから、雑誌の記事を写メってやろうとマガジンラックをごそごそしはじめたら、またテーブルの上でケータイが震えだした。

《お前だって明日空いてんだろ? どうせだし美味いもんは一緒に食おうぜ》

 文末には笑顔の絵文字。確かに、かわいらしい内装のお店で一人タルトを食べるブン太を想像したら、流石にいたたまれなくなってきた。まあ、断る理由もなかったし、結局はこうしてついてきたわけだけど、この様子じゃ、私がいなくても大丈夫だったかもしれない。ほんとは私もタルト食べたかったから、ちょうど良かったんだけどね。

『そっちのタルト一口ちょうだい』
「おう、一口とか言って半分くらい取んなよ?」
『いつもやってるくせに。あ、こっちもおいしいよ、いる?』
「食う!」

 中学生になってから、たびたびこんな風に、連れ立っておいしいスイーツの店やホテルのケーキバイキングに行くことが増えたように思う。こういう場所に桑原君をはじめ男友達を誘うのは何やらはばかられるらしく(まあターゲットが女性のお店が多い以上は仕方ないことだ)、必然的に私を誘うことになっているのだろう。おかげで最近体重計とはご無沙汰だ。いろいろと怖い。
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