第6章 報酬は水色のアイス
清潔感のある白い照明が、ワックスの掛かったリノリウムの床に無機質に反射している。長い廊下を歩く間、手にした花束の色ばかりが鮮やかに視界の端にちらついて、本当にこの組み合わせで良かったかなと少しばかり不安になった。
突発的に見舞いを思い立ち、最寄りの駅近くの花屋で適当に見繕ってもらったそれは、花の種類に疎い自分には、彼の好みに沿っているか判然としない。
病院独特の匂いにも慣れ、おそらく目をつぶってもたどり着けるほどに通ったであろう病室だが、一人で訪ねるのはまだ緊張した。
廊下を賑やかしながら歩くチームメイトがいないとこんな感じなのかと考えていたら、目当ての病室から出てきた看護士さんに少し驚く。
反射的に会釈したけど、だいぶ挙動不審に見えただろうとちょっと恥ずかしかった。気を取り直して引き戸をノックする。
「どうぞ」
『失礼します』
聞こえた声に少しホッとして、病室を覗いた。