第8章 その距離、13.5センチメートル。~獄寺隼人~
『棒だったら何でもいい気もするけどね。はい、シェアハッピー』
半分の一袋を差し出す。
「は…?なんだそれ」
『ポッキーの日はみんなでシェアするんだよ』
「はぁ…んじゃ、もらうな」
『いただきまーす』
ポリ。
ポリ。
「細ぇ。食った気しねーな」
『だからついつい食べ過ぎちゃうんだよねぇ』
「お前いっつも菓子食ってるもんな」
『そんなことな…いや、あるかも…?』
「どっちだよ」
毎時間って程ではないけど、お昼前の休み時間とか、結構頻繁にたべてるかも。
授業中、お腹すいて集中できないもん。
…え?
…獄寺君、なんでそんなこと知ってるの?
「あ?なんだよ」
『えっ、ううんなんでもない』
「はぁ?急ににやにやしだして…
いえよ、気になるだろうが」
『ほんとになんでもないから!』
言えるわけない、勘違いだったら恥ずかしさこの上ないもん。
『それより、げ、ゲームしないっ?』
話をそらそうと、とっさに言ったけど・・・
何するか全く決めてませんけど!!
「ゲーム?…まぁ、内容によるけど…」
ええと、ゲーム、ゲーム、ふたりでする・・・
『・・・ポッキーゲーム…とか…?』
おいいい何いっちゃってんの私!?!?
これじゃ、遠回しにキスしたいって言ってるみたいじゃん!
「なんだそれ?」
ご存じなかった!!そういえば獄寺君帰国子女だもんね!セーフ!
『えっと、端から食べていって、最後まで離さなかった方の勝ち、負けた人にひとつだけお願い事できるっていうルールなんだけど…止め、忘れて、しりとりしよ?』
ああもう恥ずかしい。
お願いだから、幻滅とかしないで。
獄寺くんは何か考えているみたい。
「…いいぜ、やっても。」
『えっ?し、しりとり?』
「ちげーよ、その何とかゲームだよ。」
『え、えっ、ポッキーゲーム・・・だよ?』
「なんだよ、お前から言い出したんだろ」
何、もしかして私にしてほしいことでもあるのっ?
「ん。」
プリッツ部分をくわえて、チョコの方を私につきだす。