第6章 まずはお友達から。~古里炎真~
「…いっ、ちゃった…」
古里炎真は、誰にも聞こえないくらいの小さな声でため息まじりに呟き、机の中に隠しもっていた"それ"を、かばんに仕舞ったのだった。
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「ー、ちょっと起きてー」
国語の宿題を終わらせ、休憩がてらこたつでうたた寝をしていると、ママにたたき起こされた。
『…なんでしょう』
「あんた、明日なんか予定ある?」
『明日どころか毎日フリーですが。』
「とかいって、実は隠れて彼氏とか」
『彼氏どころか友達すらいませんけど何か』
もう開き直って自虐。
「え、あ……なんかごめん」
え、謝らないで余計傷つくから。
『・・・で?何?』
「さっき正雄おじさんから連絡がきてね、明日入ってるバイトの子がインフルエンザにかかったらしくて、代わりの子がどうしても見つからないから困ってるらしいの。」
『正雄おじさんって、ラ・ナミモリーヌの?』
「そうそう。ちょうどよかった、あんた暇なら1日バイトしなさいよ。お小遣い稼げるし一石二鳥じゃない」
『私バイトしたことないけど』
「レジはもう一人のバイトの子がするから、あんたは注文とか簡単なことだけでいいみたいだから…
時給4桁よ?しかも余ったケーキは持ち帰り放題。」
『やる。』
私、大の甘党。
時給4桁とかやば。
やるしかないでしょ。
「おじさんに連絡しとくわねー」
『はいはいー。』
一日クリボッチにならずにすんだ。
ラッキー。
翌日。
Christmas。
9時半に店に行くと、早速着替えを渡された。
…我ながら似合ってませんなあ。
「いやー、助かったよ。心配しないで、難しいことは求めない。わからないことは、なんでもきいてね。このお姉さん、ベテランだから。」
「中学生なんだって?よろしくねー」
『よろしく御願いします。』
簡単な説明を受け、10:00。
オープン。
クリスマス、さらには並盛一の人気店というだけあって、日中にもかかわらず大繁盛。
最初こそぎこちなかったものの、すぐに慣れ、ミスすることなくスムーズに出来たと思う。
おじさんにも褒められ、休憩中に好きなケーキを二つもいただいた。
「夕方から一気に忙しくなるからねー、頑張ろうねー。焦らずゆっくりでいいからねー」