第3章 お忍びデート
「まぁ、そんなに凹まないで」
大野さんはとても優しく私を気遣い、笑顔を向けてくれた。
「翔くんも明日は休みなんだし」
「え?」
「え?…あ、これ言っちゃダメって言われてたやつだ」
頭をぽりぽりと掻きむしりながら、大野さんは困ったように笑う。
「内緒ね」
その笑顔は少年のようで、どこか弟のようで。
「翔くん…そっか…よかったぁ」
大野さんの焦りは、私に余裕をくれた。
サプライズがダメになったとかじゃなく、
ただ今を落ち着いて過ごせる。
「それじゃ、俺は帰るよ」
「あ、はい!ありがとうございました!」
「何もしてないのに」
手を振って歩いていく姿。
やっぱりアイドルなんだなぁ。