第2章 神田さんの苗字
『漢字はわたし充てるから』
「すきにしろ」
ぱん、とカンダくんは胸の前で手を合わせてから、お蕎麦がのってたおぼんをもって(きょうは 彼のすきな天ぷらだった ご機嫌なのかな?)行ってしまった。
『すきにしろ、かぁ…』
じゃあ そうさせていただきますね。
コムイさんに「神田」と報告しに行ったのは、このあと3分後のことでした。
▽
『あっ』
「なんだよ」
『おもいだした』
カンダ 、わたしが住んでた地名じゃん。
ソファから起き上がると、神田は 読んでいた本から 一瞬だけ目をこちらにむけた。キィ、と椅子が軋んだ。
『ねぇ神田』
「ん」
『いい苗字ね、神田って」
「そうかよ」
『うん』
彼まで近づいて、ありがと、と告げる。
彼は開いた本をわたしに近づけたとおもったら、
まるで屏風のように わたしたちの顔を隠して ちゅ、と口づけた。
「どういたしまして」
そう さわやかに 言ったあと もう一度 キスがおでこにひとつ降ってきた。
おかしいな、
こんなに このこ、かっこよかったっけ。