第2章 神田さんの苗字
「ユウ」
と呼ぶと、彼の顔は暗くなった。いつも、いつも。
セカンドのもうひとりの彼が、
ユウ、と呼んでいたことを思い出すからだろうな、
そうあたまをよぎったけれど、なにも言えないよ。
ねぇ、
『どうすればいいの?』
「は?」
『なんて、呼べば、いいの?』
▽
あなたのこと。
彼の瞳はいつも寂しそうだった。
最初は、なんて美人さんなんだろうとか、髪がきれいだ
なとか、そんなことしか考えてなかったけれど、
わたしよりも幼いけれど、憂いを帯びたその表情が、
たすけて、と言っているように聞こえた。
ユウは、小さくとも立派なエクソシストさんだった。わたしよりも小さかった背も、ぐんぐん伸びた。
伸びた背とともに、いつのまにか 彼のことを(ちょっとだけ)知って、食事を一緒にとる回数が増えた。(彼はお蕎麦しかくちに運んでいない)(鍛錬に付き合う回数も。)
今日もまた然り。
『ねぇユウ』
「それで呼ぶな マナ」
『じゃあなんて呼べばいいのよ、セカンド?』
「チッ」
『いい加減決めたらどうなの?』
「Kanda」
『Kanda?』
「カンダ」
『それまたどうして?』
「べつに」
『ふぅん』
どっかの看板で見たのかな。
でも、なんか 聞き覚えのあるおと。
なんだっけな。
『漢字は?』
「漢字ぃ?」
『カンダ、の漢字のこと』
「いらねぇだろ」
『いや、いる!だって カンダとわたしは オトモダチだからね!』
「意味がわからん」
『ユウは 髪さらさらの黒色だし、おめめも黒いから、わたしと一緒のJapanese ね』
ちょっと青みがかってる気もするけれど、まあ良し。