第1章 しあわせにいきる
「ねえ」
「なんだ」
「キスして」
はん、って顔をして神田さんは笑った。お望みどおり、と唇が動いたのがわかる。ちゅ、ちゅ、唇にやわらかい感触がおりる。音をたててキスをくれる。
もっと、もっと、と唇でねだると両手が後頭部を支えるように置かれて、愛おしむように撫でられながらまたキスが落ちる。
この瞬間がすき。
髪がぐしゃぐしゃになりながらも、まるで犬みたいにわしゃわしゃと撫でられて、しあわせになる。
神田さんの唇のやわらかさを何度も感じて、度重なるリップ音にくらくらしてくる。
「満足か?」
「きもちい」
「そうか」
「うん」
マナ、と呼ばれて はぁい、と返事をすると、神田さんが女のわたしが うっとりくするくらい 美人さんな顔と目があう。
どうしたの?と目で聞いてみると、また頭を撫でられた。耳の上からそっと神田さんの手が降りてきて、親指で唇をふにふにされる。
神田さんの手はきれいだ。神田さんは手もきれい。手が大きくて、爪は縦に長くて、でも男性らしくて。
でもこんなきれいな指にわたしはどれだけ翻弄されてきたんだろう、そう思うと悔しくなったので 神田さんの親指を唇で捕まえた。
神田さんのものを舐めてるときみたいに大切に舐めてみると、
神田さんは少しのあいだだけ目を丸くしてわたしを見つめたあと、エロいな マナは。とつぶやいた。