第11章 五里霧中
あれから一週間、俺は自分の目を疑った。
あれだけ険悪な空気を醸し出していたイビキとさゆが一緒に談笑しながら歩いていた。
は?いやちょっと待てよなんだそれ…
「納得いかないよね〜〜」
「うおっ!」
口をポカンと開けながらその様子を見ていたら後ろから気配を消したカカシさんが声をかけてきた。
「気配消すのやめてくれません?」
「俺のさゆがさーあ。仲良くなるのは嬉しいけど妬いちゃうよねー」
「シカトかよ。」
それにしてもどうして…
いつのまにイビキと…
さゆとイビキのところにアンコやライドウたちも混ざりわいわいと楽しそうに話している。
俺にはあんな笑顔見せたことねぇよな。
そもそもこの1週間書類の受け渡し以外で会話もしていないが…そのとき向けられる笑顔はあくまで営業的なものだったし…
「俺もイビキから聞いたんだけど、あの後さゆがイビキに謝りに行ったらしいんだ。『生意気な態度とってすみませんでした。サスケくんのことはどうかお願いします』って。あいつ、自分とイタチのことは何も言わなかったって。だからイビキもお互いの譲れないところは譲らないでおくらしいよ。それとこれとは別ってことにするんだって。」
「…なんか、らしくないっすね。」
拷問のエキスパートで厳格な性格のイビキがそう言ったのは俺には意外だった。
カカシ上忍も何も言わないあたりそれには同意なのだろうか。さゆ達を見つめている眠たそうなその目はどこか儚げに見える。
「近すぎず遠からず…」
「えっ…」
「ネっ!」
つぶやいたカカシ上忍に顔を向けると向こうもこちらを向きニコッと笑う。
『近すぎず遠からずな感じで見てやってほしい』
あの日カカシ上忍が言った言葉は自分の中で少し引っかかっている。
いずれ敵になるかもしれない。
いずれ殺すことになるかもしれない。
その時のために、深く情を抱かないようにする。
忍としては正しい。
普段の俺なら当然のことだと受け止められるだろう。
だがことこれに関しては、なぜか素直に受け入れられない。