第10章 カミングアウト
「あーあ。イビキったらさゆのこと泣かしたー。」
「…俺が悪いのか?」
パタンとドアが閉まるとともにアンコがため息まじりにそう言うと、イビキが少したじろぐ。
てかやっぱりあれ泣いてたんだな。
「いや、イビキは別に悪くないさ。ただあいつも閉鎖的な人間関係の中で生きてきたし、特にイタチのことは恩人みたいに思ってるとこもあってな。後で俺からも言っとくから許してやってくれ。」
「それにしてもあの殺気…チャクラだけであんなに威圧されるなんて…あの子が万が一イタチの側についたら…」
「その為にお前たちに集まってもらったのもある。」
不安そうに紅が発した言葉に今まで静観していた三代目が口を開く。
「さゆの動向も注意していておいてくれ。ないとは思いたいがさゆがもし我々の敵に回ったとき、あのチャクラは脅威的じゃ。実力や技術より、単純にさゆは家計的な関係でチャクラが多い。」
「ま、そーゆーことだから。近からず遠からずな感じで見てやってほしいんだ。」
なんだそれは……
「カカシは…あんたはそれでいいの?」
アンコが口を開く。
俺と同じことを考えたのだろう。
あれだけさゆを気にかけていて、
あれだけさゆにべったりだったのに…
カカシ上忍は顔は動かさず、アンコに向けた目をすっと動かし俺たちを見渡す。
「良いわけないさ。だから俺がさゆを敵になんて回させない。もしさゆが木の葉の敵になるようなことになったら絶対に俺が殺す。他の誰にも殺させない。傷一つだって他の奴にはつけさせない。お前らが思ってる以上に…俺はさゆのことを考えてるよ。」
そう語るカカシ上忍の纏う空気は澄んでいながら張り詰めたものだった。
他の奴に殺されるくらいなら自分の手で殺す。
忍としての覚悟。
そのときになったカカシ上忍は本当にさゆを殺すだろう。そしてきっと、自分の腕の中で冷たくなっていく彼女をひたすら抱きかかえて泣くのだろう。
さゆもだろうか?
もしも本当に、再会したイタチが自分の私利私欲の為に一族を殺したのだとしたら、そしてそれを知ったらーー
あいつは一体どうするのだろう?