第7章 後ろの少年
愛してる。
なんて心地よい響きだろう。
「さゆさん…ありがとうございます…。俺も、あなたを愛してます。」
小刻みに震えるさゆさんを自分の腕の中に納める。
シスイの死だけでなく俺に疑いがかかっていることも聞いたのだろう。
あの晩、望まぬ行動だとしても自分がシスイの背を押した事に変わりはない。
『何があってもあなたを愛してるから。』
さゆさんはどこまで気づいているのだろう。
彼女に言ってしまいたい。
ことの全てを、自分の想いを、
夢も現実も何もかも
今思っていること全部吐き出してしまいたい。
それでも。
この先どうなるのかわからない。
自分の話を聞いたらさゆさんはきっとできることは何でもしてくれようとするのだろう。
でも、もしそれで彼女を余計な危険に巻き込んでしまったら…?
きっと俺は俺自身を許せない。
この人にはいつだって笑っていてほしいんだ。
抱きしめる手に力を入れる。
うちはも木の葉も、この世の争いの全てさえも、俺が何とかしてみせる。
シスイの死は無駄にはしない。
目の奥が熱を帯びる。
自分の瞳が紅く染まるのを感じた。