第7章 後ろの少年
「さゆさん…昨日はあり…」
イタチくんの言葉を無視して抱きついた。
「さゆさん?どうしたんですか?」
イタチくんは突然のことにも優しい声で受け止めてくれる。
いつだってそうだ。
イタチくんは優しい。
それが今はひどく怖い。
いつか彼はその優しさに潰れてしまうんじゃないか。
「………シスイのこと、聞いたんですね。」
イタチくんにすがり着いた状態で問いに頷く。
シスイさんが亡くなった。
表向きは自殺とされているがうちはの幹部の人たちはイタチくんに疑いをかけているらしい。
シスイさんが亡くなったのは昨晩。
私が魂が抜けたイタチくんを連れて帰ったのも昨晩。
シスイさんの死にイタチくんが関わっているのは確実だとは思う。
でも。
「私は……」
たまらなくなって、涙が溢れてきてしまった。私よりも泣きたいのは彼のはず。
「私は……!今、うちはに何が起こってるのか知らない…あなたが今本当はどんな状況なのかも分からない。でも…!この先何があってもあなたを愛してるから…!!」
愛してる。
こんな時に愛の告白なんてと思った。
イタチくんが好きだ。
この感情は以前からあった。
だけど今はそんなんじゃなくて。
ただただ、愛してる。
それだけでしか表現できない気がした。