第6章 君の隣
「さゆさん…?」
自分の姿を捉えたさゆが突然泣き出し、思わずうろたえてしまった。
どうしたらいいかわからず、とりあえず近づくとそっと近くとタオルを渡した。
「イタチくん………」
「はい。」
「イタチくん……ありがとう……」
「…っ」
タオルを受け取り顔を沈めながらお礼を言ってくる。
なぜお礼を言われたのかはじめ理解ができなかった。
「生きててくれて……本当に…本当にありがとう……!!!」
ああ、そうか…。
「いえ。俺はただ任務を遂行しただけです。お礼を言われるような事はしてないです。」
「それでも………とにかく…ありがとう…」
本当に、ただいつも通り任務をこなしただけだった。けれどこの人にとっては初めて仲間が自分と一緒に生還したのだ。
きっと自分が生き残るなんて期待していなかったのだろう。
門を出る前から死んでいた彼女の目を思い出す。
胸の奥にざわつきを覚える。
悔しさか怒りかハッキリとはわからない。
ただ気づいてしまった。
自分の力を彼女は全く信用していなかったのだ。
周りから天才と呼ばれた。
自分でも並の忍よりは実力もあるとは思っている。
でもその実力や技術もまるで無意味だとされていた。
どんなに力をつけてもそんなもの無意味だと。
手に力が入る。
「……………俺は、俺には目標があります。その為にこんな所で死ぬ気はありません。これから先もです。」
さゆさんがゆっくりと顔をあげる。
「さゆさん、俺と組みましょう。俺は、絶対に死にませんから。」
彼女に自分を認めさせたい。
認めてもらいたい。
そして、
彼女を自分の手で闇から救い出したい。