第14章 帰還
まるで幻でも見ているかのような目でその人は私を見ている。あの後、念のためと思ってチャクラを探って見てよかった。まさかこんなとこに居たなんて。
3年の月日は長い。会った時から、私からしたら大人ではあったけど、前よりも余計に落ち着いた雰囲気になっていた。だからだろうか、他の人に会った時よりも少し緊張するのは。
何度名前を呼んでも呆けている。ここに居たってことは私を待っててくれたのかと思ったけど違ったのだろうか。そんなことを考えていたら突然身体を引き寄せられた。
「…っ!」
一瞬、思考が停止する。
えっ私もしかして抱きしめられてる?
あのゲンマさんに?
頭と腰を大きな手のひらが包み込み、柔らかいゲンマさんの髪か頰に触れる。カカシさんともイタチくんとも違う匂い。広い肩幅にすっぽりと収められて、身体がこわばっているのが自分でもわかるほどで
「ゲ…ゲンマさん…?あの…」
「ふざけんなよお前…なんで誰にも1回も連絡もなしに…」
「いや…特に報告することもないし…」
「なくてもしろよ。心配するこっちの身にもなれよ。」
「…ごめんなさい。」
心配か…
何度か、何度か夢を見た。イタチくんを追いかけた私を木の葉のみんなが敵だと指を指す夢。
あの時話を聞いていた上忍達はみんな、普通に話していてもいつ私が裏切るかもしれないと目の奥を光らせているような慎重さがあった。
でも、この人は違う。
勿論カカシさんやライドウさんアオバさんも。
心配も、『私が裏切るか』じゃなくて『私が怪我をしてないか』とか、そういう心配をしてくれている。
「ゲンマさん、ありがとうございます。」
「え?」
「ただいま。」
広い背中に手を回す。少し力を込めれば、同じように返してくれた。
「…おかえり。」