第13章 探すときほど見つからない。
「よしっ、行くか。」
お金を机の上に置いてカタリと席を立ち上がる。
「ナルトくんは?一緒に行く…と言いたいとこだけど今日は休んだほうがいいね。」
「え?」
よくよく体を見れば少し気だるそうで、チャクラも不安定だ。結構修行してたのだろう。
「また会いに行くからさ、家まで送らせて。」
「ホント…?また会える?」
「もちろん」
行こう、と手を差し出せばそっと小さなその手が伸ばされる。さっきよりも早く伸ばされたその手にホッとする。
ナルトくんの噂は私の耳にも入っていた。
九尾を赤子だった身体に封印された少年。
正直、九尾は憎い。
あの日、あの襲撃さえなければ、私は両親失う事はなかったし、カカシさんもミナトさんやクシナさんをなくすことはなかったのだ。
ナルトくんの家の前までくれば、そこはよく見る普通のアパートで、もちろんそこに電気はついていなかった。
1人で、1人で暮らしていたんだ。
こんな子供が。
暗い部屋に帰るのは寂しい。
私にはカカシさんとサスケくんがいたけど、この子はずっと1人で、周りから差別の目を受けながら生きていた。
そっと手を伸ばし抱きしめれば、小さなその体はスッポリと腕の中に収まる。
「生まれてきてくれてありがとう。」
里を守ってくれてありがとう。
里の重荷を、背負わせてしまってごめんなさい。
何もしてあげられなくてごめんなさい。
「今日、ナルトくんに会えてよかった。また今度、一緒にラーメン食べに行ってくれる?」
澄んだ青い目が見開かれる。
四代目に似た綺麗な色。
「いいの?」
「私が一緒に食べたいの。」
ダメかな?といえば笑顔で「じゃあ次は豚骨にするってばよ!」と応える。ああもうかわいい。
「じゃあまたね。」
ふわふわの頭を撫でてアパートから離れる。
サスケくん。
サスケくん。
サスケくん。
私、帰ってきたよ。
こんな私でも、会ってほしい。
抱きしめさせてほしい。
チャクラ感知で場所は分かってる。
どうやらカカシさんも一緒だ。
高まる気持ちはドクドクと加速していく。