青春あやまち論anotherstory 【黒子のバスケ】
第6章 神様って
だけど、紫原の表情はいつもの緩い顔なんかじゃなくて、とてつもなく切ないものだった。
そんな紫原の顔を見た私たちは、何も言葉を発することができなかった。
「お前たち。何手を止めてんだ!はやく片付けなければ練習ができないだろ!」
「あ…はい!すんません!!」
ただ呆然としていた私たちに、雅子ちゃんが声を掛けた。
それに一番最初に反応したのは、アゴリラ。
流石は、ゴリラなのに主将をやってるだけはある。
私たちは急いで片づけを終わらせ、練習を始めた。
「ねぇ、紫原」
その日の部活を終え、寮までの帰り道。
最後尾を歩いていた紫原に振り返り、私は声を掛ける。
「アンタ…中学時代に何があったの?」
最強を誇る帝光にいたアンタが、そんな顔をする理由が、私には分からない。
天才には天才なりの悩みがあるんだろうけど、紫原のさっきの顔は、そんなんじゃない気がするし。
何より、紫原がバスケのことで悩むなんて、まずあり得ない。
「んー…教えたいのは山々なんだけどー話すと長くなるしー…そんな簡単に他人に話していいことでもないんだよねー」
「ふーん…」
「一個言えるのはー。俺が藍ちんにずっと片想いしてるのとー…藍ちんは違う人を見てたってことかなー」
「それはまた。辛い片想いですこと」
ん?
紫原はずっと片想い”してる”?
藍川は違う人を”見てた”?
何、この現在形と過去形。