青春あやまち論anotherstory 【黒子のバスケ】
第4章 痛いほど
だけど、私は。
才能はあったかもしれないが、それも凡人の延長線だった。
頂点に立てなかった。敗けた。
大事なものを全部まるっきり奪われた。
きっと、この人だって同じ。私と。
「岡村、その手を離せ」
雅子ちゃんが静かに言うと、アゴリラは彼から手を離した。
「…今日の試合は中止だ。私はこのまま枝尾を連れて病院へ行く。お前たちはコイツを学校へ連れていけ。福井、任せたぞ」
「はい」
雅子ちゃんが言うと、彼はアゴリラと福井ちゃんに連れられて行った。
私は劉に抱えられ、雅子ちゃんの車に乗せられてそのまま病院送りとなった。
「劉…」
車まで運ばれている途中。
私は珍しくも弱々しい声で言う。
「ずっと…守っててくれた…んだね…」
「でも結局守れなかったアル」
「ううん…ありがと…」
首を小さく振りながら私は呟いた。
「紫原…」
「なーにー?」
流石にこんなに顔の腫れ上がった女の子を見るのは初めてなのか、紫原はあまり目を合わせようとしない。
「やっぱ…私とアンタは…似てないよ…」
目的は一緒かもしれないけど。
結局。
アンタは奪う側の人間で、私は奪われる側の人間でしかないんだよ。