青春あやまち論anotherstory 【黒子のバスケ】
第20章 流れ星に
「ねぇ、劉。劉は流れ星に何をお願いしたの?」
ワタシの隣で空を眺めていた鈴佳が問いかけてきた。
その笑顔は、初めて鈴佳を見た時と全く変わらないモノだった。
ワタシはそんな鈴佳を見ながら、もう十年以上も前の出来事を思い出した。
*
『お兄ちゃん!鈴佳もシュートしたい!』
日本に家族で旅行に来ていた時のこと。
どこかからか聞こえてきた声にワタシは振り返った。
声の方を目で辿ると、小さな女の子とワタシと同じくらいの背丈の男の子がバスケットボールを持って遊んでいた。
『鈴佳には無理だろ』
『出来るもん!貸して貸してぇ』
『ったく…』
男の子からボールを受け取った女の子は、嬉しそうにバスケットゴールの前に立つ。
そして、大きく体を沈み込ませてボールを放った。
『!』
大きな弧を描いたボールは、吸い込まれるようにリングをくぐる。
『お兄ちゃん見た!?鈴佳のシュート入ったよ!!』
顔をクシャッとさせて笑ったその女の子の笑顔は、とても印象的で。
可愛い。と正直に思った。
”鈴佳”
会話の節々から聞こえた、その名前。
きっとあの女の子の名前なんだろう。とワタシの記憶に残った。