青春あやまち論anotherstory 【黒子のバスケ】
第20章 流れ星に
ホント…お人好しって言うか、何というか…。
いつまで人の幸せを祈ってんだ、この純粋無垢のお馬鹿さんは。
「室ちんはー?何かお願いしたのー?」
「俺?俺は…今度こそは優勝出来ますように。かな?」
「主将っぽいアルな」
「劉…氷室は『ぽい』じゃなくて、主将だよ」
ハハッと笑う氷室。
WCまでのギラギラと燃やした闘志はどこへやら。
今目の前の氷室は、一人のチームを纏める主将そのモノだ。
「枝尾はどーなんじゃ?」
アゴリラは問いかける。
私は少し「んー」と考える仕草を見せてから答えた。
「ゴリラが人間になれますように?」
「んがっ!?」
「おーそれ重要なことだな」
「福井まで何を言ってるんじゃ!」
福井ちゃんも一緒になって言い始め、反論するアゴリラを皆で笑う。
「嘘嘘。ちゃんとお世話になった先輩二人の合格祈願をしたよ」
「枝ちんが言うと嘘くさいよねー」
「オイ、紫原。どーゆー意味だ、コラ」
本当のことなのに、この言われ様。
私自身のお願い事なんて、無理なことしか思い浮かばなかったから。
本当に私が祈りたかったのは…「劉がずっと側に居てくれますように」だったから。
そんなこと。不可能だって分かってたから。
仕方なーく、二人が合格しますように。って。
少し自嘲気味に笑って、私は隣の劉を見上げた。