青春あやまち論anotherstory 【黒子のバスケ】
第19章 蓋をした
だけど、私の興味は今は星なんかじゃない。
「あららぁ?紫原君ってば、そんな感傷的なこと言ってどーしたのかなぁ?」
「か、感傷的になんかなってねーし!」
ムキになって言い返す紫原。
それがおかしくて、私はさらに揶揄う。
「なってましたよねー?ねー、劉さん?」
「なってましたアルな」
「二人して馬鹿にすんなし!」
「「ぷっ」」
「ほら、二人共。アツシがへそを曲げてしまうよ?」
笑う私と劉。
いじける紫原。
それを宥める氷室。
他愛ない会話をしながら歩いていると、いつの間にかもう寮の前。
「じゃーねー」
「お疲れ様、鈴佳」
「うん。またね」
「また明日アル」
女子寮の前でいつものように、さよなら。
紫原と氷室が手を振り、劉が私の頭を撫でる。
隣の男子寮へ入っていく三人の後姿を見つめながら、私はまだ少し頭に残る温もりに手を置く。
…前と少し違うこと。
帰宅メンバーの人数が減ったこともだけど…劉が別れ際に、頭を撫でるようになったこともそう。
それと同時に。
私の中に芽生えた一つの気持ち。
ううん。芽生えたんじゃない。
本当は…ずっと前からあった気持ちなのかもしれない。
それに気づいてないフリをして、私も寮の中へ入っていった。