青春あやまち論anotherstory 【黒子のバスケ】
第18章 良かった
「…こんなこと言ったら、マネージャー失格かもしんないけど」
寒いし中へ入ろう。と宿泊先の中に入りながら、私は口を開いた。
「昨日の試合…負けて良かったって思ってる」
本当に悔しいし、勝ちたかったけど。
でも。
あのまま勝って、勝ち進んで、例え決勝で洛山に藍川に勝ったとしても。
私は何も変わることなんて出来なかったと思うから。
大事なモノに気づけないままだったと思うから。
「氷室が紫原を殴って、紫原がゾーンに入って…」
確かにあの時。
私は、陽泉の名を背負って戦うコート上の五人に対して「頑張れ」と思ったのだ。
「…でも負けて。アイツが泣いてるの見て。雅子ちゃんに『負けだ』って言われて。悔しかったけど…あの誠凛に負けたからこそ、気づけたと思うから」
「そうアルか」
「福井ちゃんが『ありがとう』って、劉が『鈴佳は鈴佳だ』って言ってくれて…なんか、色々と吹っ切れた」
ただ、私は、ずっと。
共に励みあってきた仲間に「ありがとう」って言って欲しかっただけだった。
私を、一人の『枝尾鈴佳』として見て欲しかっただけだった。